【第6・7節】(B1:橘哲也)
第6節、7節は連日対局。
この2日間で、残り3節の各々の目指す道が決まると言っても過言ではない。
全10節であるから、2/10である。
それでも打つものにとっては、やはり特別と感じてしまう2/10なのだ。
開始時点でマイナス300P。
当然の降級ポジション。
だが夢を見させてくれる。それが連日対局である。
「2日で300勝てば・・・っ!」
この時ばかりは、負けた時は降級を確実なものにしてしまうという現実には見向きもしないのである。
対局者16名の野心が蠢く中、運命の賽は投げられた。
自分の結果は約45Pと60Pを加算してトータル△200とし、降級ラインをひとまず抜け出せた。
結果だけみれば上出来である。
自分のポイントを加算でき、ターゲットが崩れてくれた。
だが人は強欲である。
「これで昇級は無理かもな」
そんな捨てゼリフを吐くおこがましさが、自分の中に残っていたのだから・・・
【第5節】(B1:橘哲也)
「流れ」とはなんなのだろうか?
そもそも存在するのだろうか?
麻雀を打つ者なら誰しもが口にし、耳に入る言葉。
5節終了し、現在の私のポイントはマイナス300を超え、目下降級ポジションである。
毎節同卓する相手の中に、必ずと言っていいほどその節の勝ち頭がいる。
言ってみれば、「流れが悪い」ということか。
しかし、対局が終わる度に訪れる疲労と反省の多さは、一言で片付けてよいはずがない。
そんなことはわかっているのだけれど・・・
一年という長いスパンで行われるBリーグも、半分を消化した。
一節に200P勝てることもあれば、逆に200P負けれることもわかった。
「流れが良い」ことで勝てるならば、そんなものにも頼りたくなってしまう。
もはや、そんなところまできてしまったようだ。
【第4節】(B1:橘哲也)
「宮崎和樹」
第3期後期、共にプロテスト合格。
同期で同い年の彼はプロ一年目にしてビッグタイトルの一つ「王位」を史上最年少で獲得。
その後もBリーグに順調に駆け上がり、このB1リーグも二年目になる。
同じスタートラインだったにも関わらず、常に背中を見続けた相手。
久しぶりに肩を並べた今、
今度は自分の背中を追わせる番がやってきた。
・・・はずだった。
大敗。
協会で打ってきた麻雀では経験がないほどの敗北。
積み上げてきたものが音を立てて崩れていく。
見えたと思った背中が今まで以上に霞んでいった。
奇しくも、Bリーグ対局初めての快晴。
雲一つない空は人の気持ちを嘲笑うかのように、強く輝いていた。
それでも逃げることは許されないのだ。
ただ卓につき、牌を握るのみ。
残り24半荘を打ち終えた時、この空を思い出すために。
【第3節】(B1:橘哲也)
三度目の雨。
今期のリーグ戦は、今回まですべて雨である。
三度目の鬱陶しい朝を、傘を差して歩く。
しかし対局会場が近付くにつれ、気合以外の思いは消えていった。
B1リーグは全16名で一年を通して昇降級を争う。
凌ぎを削る相手は15名。
その中に2人だけ「負けられない」選手がいる。
その1人。
「市川裕樹」
第5期前期にプロテスト合格し、以降リーグ戦をストレート昇級。
自分より後輩は同リーグには彼一人。
1・2回戦、ストレートに攻めてくる市川の麻雀に対し、普段の麻雀を打てない自分がいた。
負けられない相手に対し、着順は
市川・1−1
橘・4−4
と、まったく話にならない。
思うだけなら誰にでも出来るのだ。
陰鬱な思いを拭うために、会場の外に出る。
雨はいつの間にか止んでいた。
「マイナス100か・・・」
一人今日の対局を振り返る。
そしてあと2回戦で出来ることを考える。
答えは簡単だ。
――ただ前を向くだけ。
相変わらず衰えを見せない市川の攻撃。
だが自分にも反撃の材料が揃う。
後は、刃を交えるだけだ。
そして四回戦が終了し、結果は
市川・1121
浪江・3334
金・2243
橘・4412
市川が200Pオーバーの一人舞台。
一気に二位まで上り詰める。
今日間違いなく得るものが多かったのは市川であろう。
だが、自分にも光明は見えた。
それが、雨上がりの曇り空の隙間から見える僅かな光ほどだとしても。
次節に闘うもう1人の「負けられない」相手に生かしてみせよう。
【第2節】(B1:橘哲也)
5月10日、開幕戦に続き太陽に嫌われる。
傘を差さずに歩ける程度だった雨足が、外出を億劫にさせるほどの強さに達したその頃、対局が終了した。
雨の第2節は先行した選手たちが足を取られ、下位集団が意地を見せて踏みとどまる結果となった。
しかし、重馬場に苦しんだ上位陣の中で、「順当」にスコアを伸ばした者もいる。
「吉田光太」
16名のB1選手の中で、本命石野に対して唯一の対抗と目される選手であろう。
独自のスタイルと強固な意志。
最近は「右手に龍を宿す」と言う都市伝説が巷を賑わしている。
Cリーグ・B2リーグでは立ち止まることもあった吉田だが、
一年目のB1リーグでは出足のよいスタートを切ったと言えるだろう。
対抗が頭1つ抜ける形。
しかし麻雀が「順当」な結果になるのがどれほど難しいか?
一番自覚しているのは、過去何度か苦渋を舐めた本人であろうか・・・
【第1節】(B1:橘 哲也)
4月13日、外は生憎の曇り空。
第7期Bリーグの開幕―
この日くらいは快晴で迎えたかったと思うのはエゴなのか・・・
だが天候によって自らの麻雀に変化があるわけではない。
空の重たさとは対照に、足取り軽く会場に踏み込む。
挑戦者に気負いは必要ないのだから。
今期のB1リーグで最も注目する選手は?
と聞かれれば、大多数の者が
「石野 豊」
と答えるだろう。
前・雀竜位であり現・發王位。
先日行われた雀竜決定戦での闘牌も記憶に新しい。
実績は16名のB1リーガーの中では抜きん出ている。
第6期Aリーグにおける残酷な形での降級により、今期はB1からの挑戦となる。
「勝って当然」と言わんばかりの周囲からのプレッシャーを本人も感じているだろう。
その石野は好スタートと呼ぶに相応しい成績で、無言の圧力に答えてみせた。
Aリーグへの2つの昇級枠を争う闘い・・・
―全ては結果のための過程である―
私の信条であり、プロと呼ばれる者の真理だと思っている。
次節こそは私も「プロ」と呼ばれる由縁を見せたいものである。